タイ語を話せるようになりたい。
でも、日本に住んでいる。
周囲にタイ人はいないし、タイ語を使う仕事でもない。
「話す環境がないのだから、上達しないのも仕方がない」
以前の私は、そう考えていました。
ところが、タイに住んでいたときでさえ、意識しなければ日本語や英語だけで一日を終えられました。
タイにいることと、タイ語を使っていることは別だったのです。
反対に、日本にいても、スマートフォン、独り言、音声メモ、オンライン会話などを組み合わせれば、毎日タイ語を口から出す環境は作れます。
そこで今回は、少し遊び心を入れて、
7日間だけ「ひとりタイ語生活」
一日15分、自分の生活を少しだけタイ語化する
という方法を紹介します。
一週間でペラペラになる方法ではありません。
「タイ語を勉強しているのに、実際にはほとんど話していない状態」から抜け出すための一週間です。
タイに住めば、自然に話せると思っていた
タイへ行けば、周囲からタイ語が聞こえてきます。
看板もタイ文字ですし、店員もタイ語で話しています。
それだけを考えると、住んでいるうちに自然と話せるようになりそうです。
しかし、実際の生活では、次のようなことが起こります。
- 知っている短いタイ語だけで買い物を終える
- 分からないと英語へ切り替える
- 日本人同士では日本語だけを使う
- 店員との会話は注文と会計だけ
- 難しい話題になるとタイ語を避ける
これでは、タイにいても、自分から話すタイ語はほとんど増えません。
大切なのは、住んでいる国ではなく、
一日の中に「自分がタイ語を口から出す瞬間」が何回あるか
です。
「環境がない」ではなく、環境の単位を小さくする
タイ語を話す環境と聞くと、タイ人の友人、タイ語学校、タイでの就職など、大きなものを想像しがちです。
もちろん、実際の人との会話は大切です。
しかし、毎日すぐに用意できるとは限りません。
そこで、環境をもっと小さく考えます。
| 大きな環境 | 今日から作れる小さな環境 |
|---|---|
| タイ人の友人を作る | 一人で30秒の音声メモを録音する |
| タイ語学校へ通う | 教材の会話を一人二役で読む |
| タイで働く | 仕事や家事の動作をタイ語で言う |
| タイへ長期滞在する | 毎日同じ時間にタイ語音声を流す |
完璧な会話環境を待つのではなく、小さなタイ語環境を一日の中へ散りばめます。
7日間「ひとりタイ語生活」のルール
ルールは3つだけ
- 一日15分以上を目標にしない
- 毎日一度は自分の声を録音する
- 間違えても、その場では会話を止めない
正しいタイ語を長時間勉強する企画ではありません。
知っているタイ語を使い、言えない部分を発見する企画です。
1日目|朝の3分をタイ語にする
朝起きてから行うことを、短いタイ語で言います。
最初は、一文だけで構いません。
タイ文字
ตื่นแล้วครับ
発音表記
dtʉ̀ʉn láeo khráp
カタカナによる読み方の目安
トゥーン・レーオ・クラップ
日本語の意味
起きました。
タイ文字
วันนี้ต้องไปทำงานครับ
発音表記
wan-níi dtɔ̂ng bpai tham-ngaan khráp
カタカナによる読み方の目安
ワンニー・トン・パイ・タムガーン・クラップ
日本語の意味
今日は仕事へ行かなければなりません。
カタカナは、大まかな読み方をつかむための補助です。
声調や母音の長さは、辞書や教材の音声でも確認してください。
朝の目標は、正確な発音を完成させることではありません。
一日の最初に、自分の口からタイ語を出すことです。
2日目|スマホへ30秒話しかける
スマートフォンの録音機能を使い、今日の予定を30秒だけ話します。
話す内容は、日本語なら簡単に言える程度で構いません。
- 今日は何をするか
- どこへ行くか
- 何を食べたいか
- 今の気分はどうか
途中で言えない言葉が出ても、録音を止めません。
知っている言葉へ言い換えます。
例えば「会議」が分からない場合
難しいタイ語を探して沈黙するのではなく、
วันนี้ผมคุยเรื่องงานกับเพื่อนครับ
wan-níi phǒm khui rʉ̂ang ngaan gàp phʉ̂an khráp
ワンニー・ポム・クイ・ルアンガーン・ガップ・プアン・クラップ
今日は友人と仕事の話をします。
と、知っている言葉で近い意味を作ります。
録音後に、言えなかった表現を一つだけ調べます。
3日目|家の中へタイ語を3つ置く
家の中にある物へ、タイ文字を書いた小さな付箋を貼ります。
大量に貼る必要はありません。
毎日必ず使う3か所だけ選びます。
| 場所・物 | タイ語 | 読み方 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫 | ตู้เย็น | dtûu yen/トゥー・イェン |
| 鏡 | กระจก | grà-jòk/クラジョック |
| ドア | ประตู | bprà-dtuu/プラトゥー |
付箋を見たら、単語を読むだけでなく、短い動作も言います。
เปิดตู้เย็น
bpə̀ət dtûu yen
プート・トゥーイェン
冷蔵庫を開ける。
生活と単語を結び付けると、単語帳の中だけにあるタイ語ではなくなります。
4日目|一人二役で会話する
相手がいなくても、質問と回答を交互に言うことはできます。
おすすめは、食事の場面です。
A:อยากกินอะไรครับ
yàak gin à-rai khráp
ヤーク・ギン・アライ・クラップ
何を食べたいですか。
B:อยากกินอาหารไทยครับ
yàak gin aa-hǎan thai khráp
ヤーク・ギン・アーハーンタイ・クラップ
タイ料理を食べたいです。
回答は毎回変えます。
- ラーメンを食べたい
- 今日は家で食べたい
- まだお腹が空いていない
- 辛い物は食べたくない
同じ質問へ違う答えを作ると、暗記した会話から少しずつ離れられます。
5日目|動画を見て「一言だけ盗む」
タイ語の動画を一本見ます。
ただし、全部を教材にしません。
出演者が使った短い反応を一つだけ選びます。
- 本当ですか
- なるほど
- 大丈夫です
- ちょっと待ってください
- どうしてですか
一言を選んだら、場面と表情も一緒にまねします。
タイ語は音だけでなく、相手への反応として覚える方が会話で出しやすくなります。
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6日目|実際の人へ一往復だけ話す
家族、友人、オンライン講師、タイ料理店など、利用できる相手へ短いタイ語を一つ使います。
長い会話をする必要はありません。
今日の成功条件
自分が一言話し、相手から一言返ってくれば成功。
通じなかった場合も、失敗ではありません。
どの音が伝わらなかったのか、どんな言い方なら自然なのかを確認できます。
一人で練習しているだけでは見つからなかった弱点が見えます。
7日目|一週間前と同じ内容を録音する
2日目に録音した「今日の予定」を、もう一度30秒話します。
最初の録音と比較します。
- 沈黙が少し減ったか
- 同じ言葉を繰り返さなくなったか
- 新しい表現を一つ使えたか
- 声が以前より大きくなったか
- 間違えても話を続けられたか
発音を完璧に採点する必要はありません。
一週間前より、タイ語を話すことへの抵抗が減っていれば十分です。
7日間の一覧表
| 日 | タイ語化する場所 | 行うこと |
|---|---|---|
| 1日目 | 朝 | 起床後の一言をタイ語で言う |
| 2日目 | スマホ | 今日の予定を30秒録音する |
| 3日目 | 家 | 3か所へタイ語の付箋を貼る |
| 4日目 | 食事 | 質問と回答を一人二役で話す |
| 5日目 | 動画 | 短い反応を一つまねる |
| 6日目 | 実際の会話 | 一往復だけタイ語で話す |
| 7日目 | 録音 | 同じ話題を再録音して比較する |
話す相手がいない人が避けたい3つの罠
教材を読むだけで終わる
音読は役立ちますが、書いてある文章を読むことと、自分で内容を作って話すことは別です。
最後に教材を閉じ、自分の予定や気持ちへ置き換えます。
正しい文章が完成するまで黙る
実際の会話中に、辞書で完璧な文章を作る時間はありません。
知っている単語を使い、短い文章へ言い換える練習をします。
聞き流しだけで環境を作ったと思う
タイ語音声を流すだけでは、自分が話せない部分を発見できません。
聞いた後に、一文だけでも自分の声を出します。
タイ語環境は「量」より「役割」で考える
一日中タイ語を流していても、自分が受け身のままでは、話す練習は少なくなります。
一日のタイ語を、次の4つに分けて考えます。
| 役割 | 具体例 |
|---|---|
| 聞く | 教材、動画、歌を聞く |
| まねる | 短い音声の直後に発音する |
| 作る | 自分の予定や気持ちを話す |
| 通じさせる | 実際の相手と一往復する |
毎日すべてを長時間行う必要はありません。
一日15分の中で、4つの役割を少しずつ回します。
第二言語学習から見た「話す環境」
第二言語学習では、理解できる言葉を多く聞くことに加え、自分で言葉を作って話し、相手と意味を確認し合うことも学習機会になると考えられています。
自分で話そうとすると、
- 知っていると思っていた単語が出てこない
- 語順が分からない
- 発音が相手へ伝わらない
- 別の言い方が必要になる
という問題に気付きます。
この「言えなかった」という気付きが、次に何を学ぶかを教えてくれます。
7日間が終わった後に残すもの
すべての習慣を続ける必要はありません。
自分に合ったものを二つだけ残します。
- 朝の一言
- 30秒の音声メモ
- 一人二役の会話
- 動画から一言だけまねる
- 週に一度の実際の会話
無理にタイ語漬けの生活を作ると、数日で疲れます。
日本語で暮らしながら、タイ語が自然に入り込む小さな場所を残す方が続きます。
まとめ|タイ語環境は、住む場所より毎日の設計
タイ語を話す環境がないから、話せるようにならない。
以前の私も、そう思っていました。
しかし、タイに住んでいても、タイ語を避ければ話す機会は増えません。
日本にいても、毎日の中へ、
- 朝の独り言
- 30秒の音声メモ
- 家の中のタイ文字
- 一人二役の会話
- 動画から盗んだ一言
- 実際の相手との一往復
を入れることはできます。
最初から完璧な会話相手や留学環境を用意しなくても構いません。
今日、タイ語を一文だけ口から出した。
言えなかった言葉を一つ見つけた。
昨日より少し長く話せた。
その小さな環境を毎日作ることで、教材の中にあったタイ語が、自分の生活で使う言葉へ変わり始めます。
タイ語環境は、どこに住んでいるかではなく、今日どこでタイ語を使うかによって作れます。